メインテーマは「テック・エデン」、30周年でさらなる熱気を帯びる「メゾ...

新たなテクノロジーが可能にする、自然との新たな関係構築

今回の展示会のインスピレーションテーマは「TECH EDEN（テック・エデン）」。“未来的なバイオフィリア（自然愛）にフォーカスし、新たなウェルビーイングの世界、テクノロジーと自然が調和を取り戻した世界に誘う”というコンセプトだ。

特に印象的だったのはエリザベス・ルリッシュがキュレーションした「WHAT’S NEW？IN DECOR」。緑、青といった自然を想起させる色にあふれた幻想的で大胆な空間は、没入感がありテーマを体感させるに十分なものだった。

「WHAT’S NEW？IN DECOR」より　©Anne-Emmanuelle Thion

「WHAT’S NEW？IN DECOR」より　©Anne-Emmanuelle Thion

「WHAT’S NEW？IN DECOR」の印象的な空間提案の一角にて。ここ数年の明確なトレンドの一つが、これまでリサイクルが十分ではなかった廃棄物の新たな利用方法の提案だが、貝殻を利用したテラゾーについての明瞭なプレゼンテーションだった

毎回注目を集める、ハイエンドなデコレーションを紹介する「Signature」エリア。その入口の一つには、創業260周年のクリスタルガラスメーカー「バカラ」が製品やシャンデリアと共に「Alchemy」という体験型の大型映像を展示した。

バカラ「Alchemy」　©Anne-Emmanuelle Thion

もう一つの入口には、今回の展示会のデザイナー・オブ・ザ・イヤー、2024年パリ五輪の聖火トーチをデザインしたフランス人デザイナーのマチュー・ルアヌールによる「Outonomy（自律のAutonomyのもじりであり、Out + Economyで脱・経済という意味と推測）」が展示された。これは展示会テーマの「TECH EDEN」を受け、自然と共生する近未来の住居のあり方をプレゼンテーションしたもの。

バカラという歴史・伝統と、最新技術による近未来という対極がそれぞれの入口に配置されていた。

Mathieu Lehannueur「Outonomy」　©Felipe Ribon 5

「TECH EDEN」を具体的に見せる展示の一つ「INSPIRE ME!」は、「Well-Being Cafe」｢Gym Station｣「SPA Room」の3エリアから構成された。たとえばWell-Being Cafeは「カフェは単に食べて人と会う場所ではなく、拡張された美の震源地となる」というコンセプトで、これからのカフェに期待されるあり方を提示した。

「INSPIRE ME！」の「Well-Being Cafe」 ©Anne-Emmanuelle Thion

若手デザイナーを紹介する「Rising Talent Awards」では、選出された7人が「TECH EDEN」を受けて手仕事と技術革新を融合させた作品を展示した。技術革新によってハードルが下がった少量生産のものづくり、環境問題への対応からますます求められるさまざまな素材のリサイクル、そして手づくりや工芸的な手法が注目されている印象を持った。

Rising Talent Awards　©Anne-Emmanuelle Thion

Rising Talent Awards　©Anne-Emmanuelle Thion

2019年以来の現地取材となったメゾン・エ・オブジェだが、会場全体の雰囲気はコロナ前とまったく変わらない印象を持った。新たなトレンドや次世代のデザイナー、活躍している出展者を世界的な視野で一望できる国際展示会の面白さを改めて感じることができた。

会場の様子。メイン動線を示す赤いラインの交差点に会場全体の地図があってわかりやすい　©Anne-Emmanuelle Thion

会期初日の朝、最寄り駅から会場へ向かう人々を「welcome home」というバナーが迎える

ホールとホールを繋ぐ通路でのプレゼンテーション　©Anne-Emmanuelle Thion

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